貧困家庭に食べ物 広がるフードパントリー 子ども食堂と連携や企業の大口支援も - 毎日新聞 - 毎日新聞
本当に困っている子どもたちに支援を届けられないか。そんな試みの最前線が、貧困家庭に食品を無料で提供する「フードパントリー」の活動だ。埼玉県内では、1年半前に県内初の民間団体が発足して以降、既に16団体まで増え、今年中には30団体ほどになる見込み。新型コロナウイルスの影響で子ども食堂の活動が自粛を余儀なくされる中、普段は2カ月に一度開催のフードパントリーは各地で臨時開催している。さらに、子ども食堂などとも連携してネットワークを広げ、企業などからの食材や日用品の大口提供も実現した。【松下英志】
県内初の団体は「越谷子育て応援フードパントリー」。草場澄江代表は小学校教諭を経て民生・児童委員となり、4年前に子ども食堂を始めた。しかし、一人親家庭や児童扶養手当の受給家庭など、本当に支援を必要としている子どもたちの参加がそれほど多くないことに悩んでいた。そんな時、フードパントリーの活動を知った。
パントリーは食品の貯蔵庫を意味し、国内では企業などから食品の寄付を受ける「セカンドハーベスト・ジャパン」（2HJ、東京）が草分け的存在。だが、食品は集まっても貧困家庭への渡し手が足りず、2HJはパントリーの開催場所を求めていた。「これだ！」と手を挙げた草場さんに、地元越谷市も全面協力。児童扶養手当の対象家庭など約2000世帯にチラシを配り、食品を入れる大きなカバンを持参しての参加を呼びかけた。
対象は「ひとり親家庭等医療費受給者証」、「児童扶養手当受給者証」、保護者の「障害者手帳」、または越谷市生活自立相談「よりそい」の紹介状を持つ人。2018年9月から奇数月の第1月曜日午後5～8時に開催し、米やレトルト食品、菓子など1人当たり買い物かごいっぱいの食品を渡している。毎回100～150世帯前後に提供するが、2HJからの食材だけでは足りず、米などの寄付を募って用意する。
パントリーの団体は18年11月に深谷、19年1月には加須でも発足し、準備中だった朝霞を加えた4団体で19年2月にネットワークを結成。その後も川口やさいたま、富士見、草加、幸手、川越各市や杉戸町など各地に誕生し、ネットワークは拡大した。
一方、県内の子ども食堂は19年8月時点で213カ所あり、食材が必要な点で共通することなどから、大口寄付の受け入れなどで両者は連携。学習支援「アスポート」の団体と合わせて2月19日、製菓会社の菓子や、生活用品メーカー「ユニリーバ」から320箱、約6000点のシャンプーなどの提供を受けた。これを子ども食堂80カ所、フードパントリー13カ所、アスポート8カ所で配布した。
また、新型コロナウイルスの影響で学校が休校した3月は家庭での需要増を見込み、越谷や草加、富士見などの団体が臨時のパントリーを開催。県の仲介で本来は給食用の食材や県の防災備蓄品のレトルト牛丼なども提供された。三郷の子ども食堂でも青空パントリーの試みを始めた。
草場さんは「フードパントリーは突破口の活動。本当に困っている子どもや家庭と顔の見える関係になり、そこから学習支援や生活相談につながれば」と手応えを語る。
県も団体設立のサポートや大口寄付する企業とのマッチングなどで活動を支える。県福祉部の内田貴之企画幹は「子ども食堂は誰でも気軽に取り組める活動であることから急速に広がった。さらに取り組みやすいのがパントリー」と分析。「子ども食堂やパントリーは貧困家庭と社会が結びつく接点。地域の大人とのふれあいによって子どもたちが自分に自信を持ち人生を切り開く力を身に付けられれば、貧困の連鎖を断ち切れるかもしれない」と期待している。
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March 29, 2020 at 09:21AM
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